大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)916号 判決

本件事故は控訴人の被用者である今野が、その勤務先である控訴会社の営業の用に供する自動車を運行したことによつて生じたものであることが明らかであり、このような場合には特段の事情のない限り、控訴人において右自動車の運行を支配していたものと認めるべきであるから、右事故により生じた損害は、自動車損害賠償保障法三条により、控訴人をしてこれを賠償せしめるのを相当とする。

ところで控訴人は、本件加害車の運行は今野の無断運転によるものであると主張する。前示証人今野の証言及び原審における控訴人代表者の尋問の結果によれば、本件事故当日今野は一旦退社し近所にある控訴会社の寮に帰つたが、翌日に迫つた軽自動車の運転免許試験に備えて、練習のため自動車の運転をしようと思い立ち、同日午後九時前頃、既に戸締りのしてあつた工場に裏側扉をこじあけて入り、更に同所内にある事務所の裏側出入口をこじあけてこれに侵入し、控訴会社において同所に保管中の加害車のキーを取出し、これを使用して右車を運行したところ、約五分後に本件事故を起したことが認められ、これに反する証拠はない。右認定の事実によれば、加害車の運行が今野の無断私用運転であることは明らかであるが、右によつても、当時加害車の控訴人への返還がもはや予想され得ない状況にあつたとは到底認め難いから、右の事実を以て、右の特段の事情となすに足りない。

(岡部 吉田 川上)

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